最終更新 2019.2.4
○F3戦闘機とは?
F16を元に日米共同開発されたF2戦闘機の後継機の俗称です。
F2戦闘機
F16戦闘機
F2戦闘機はいわゆる"マルチロール機"・"戦闘攻撃機"に分類され、ある程度の対地攻撃能力と強力な対艦攻撃能力を持つことから、後継機であるF3にもそれらの能力を持つことが求められます。
○F3戦闘機の開発を巡る経緯
前回のF2戦闘機開発の際に日本は最初、単独開発を望んでいました。しかしアメリカからの政治的圧力と技術的要因、特に実用に耐えうる高出力エンジンの開発が難しかったことにより最終的にはアメリカとの国際共同開発に落ち着いた経緯があるのです。
しかも、そのアメリカとの共同開発で日本はかなり悔しい経験をしています。
というのも、なんとアメリカはその技術的優位を利用して半強制的に日本に最新のレーダー技術(日本の得意分野)を開示させたにも関わらず、戦闘機に搭載するソフトウェアのソースコードは開示しないという舐めっぷりだったのです。
(現代の戦闘機においては、ソフトウェアのソースコードが極めて重要で性能を大きく左右する)
さらに開発費は高騰し、機体単価も当初予想より大幅に増え、計画配備数を満たす前に製造を終了してしまいました。
(ただし、F2はその後の改修により今ではかなり良いものに仕上がっています)
これらの経緯から日本は、独自でステルス技術・レーダー技術・戦闘機用高出力エンジンの研究を進めてきました。
あのATDX(X-2)と呼ばれる技術実証機はこれら地道な研究の賜物なのです。
*ATDX(X-2)についてはコチラ↓
そして今回のF2後継機開発を巡る問題。通称F3の開発には以下2通りの案があります。
・国内単独開発
・国際共同開発
日本政府内でもどちらにするか意見が割れているようで、2018年夏には決定すると言われていましたが延期されました。
それではここで国内単独開発、国際共同開発について見ていきましょう。
○国内単独開発
メリット
・自分たちの要求に柔軟に対応できる。
・改修や追加配備などにあたり、他国の影響を受けない。
・国内産業の活発化に繋がる上、雇用も創出され、経済効果が見込める。
・自国の技術力躍進が見込める。
デメリット
・戦闘機の独自開発経験がないため、技術的不安が多く残る。
・他国への輸出が無いと製造数が少なくなってしまい、機体単価が高くなる。
◇国内単独開発を巡る動き
(1998〜継続中)
各種レーダー/センサー・ステルス技術・アビオニクス技術・HMD・火器管制システムの研究
(2010〜2015)
次世代エンジン主要構成要素の研究
(2016)
ATD-X初飛行
(2013〜2017)
戦闘機用エンジン要素の研究
(2018)
IHI製 XF9-1(新型エンジンの試作品)導入
◇XF9-1について
XF9-1は新型戦闘機に搭載するエンジンを実証するための研究用でIHI製です。
とは言っても、ドライ推力11t・アフターバーナー推力15t以上で実用に十分なレベルの出力です。
タービン入口温度は1800℃以上、直径は1mというコンパクトさでこの出力は画期的です。
さらに日本の得意分野である素材技術を生かしたセラミック複合材・特殊な超合金でエンジン温度を高くすることに成功しています。
従って、前回のF2開発の時に問題となった「自前でエンジンを製造できない」という問題は解決間近といったところです。
○国際共同開発
メリット
・海外の高い技術を習得できる。
・製造コストが国内単独開発よりも抑えられる可能性が高い。
・各国の得意分野の技術を持ち寄ることができる。
・戦闘機を製造した経験があるメーカーとの共同開発には安心感がある。
デメリット
・国内での経済効果は限定的。
・追加配備や改修には他国の同意が必要になることもある。
・核心技術がブラックボックス化された場合、技術を得られないばかりか自前での改修などが難しくなる可能性がある。
・他国との、特に性能面での妥協が必要となる場合もある。
◇国際共同開発を巡る動き
(2018)
日本政府がエアバス・ボーイング・ロッキードマーティンなど各社に情報要求書(RFI)を提出。
これに対して、ロッキードマーティンは日本政府に「F22とF35のハイブリッド型新型機の開発」を提案する。
(2018)
イギリスが開発する次期戦闘機"テンペスト"の開発に参画( つまり、共同開発したテンペストをF3として採用) する可能性がある旨が報道される。
(2019)
日本の安倍首相とイギリスのメイ首相が会談、安全保障分野での協力拡大で合意する。この中に、戦闘機開発が含まれている可能性もある。
◇「F22とF35のハイブリッド型新型機」について
*この案は廃案になった可能性が高いです。詳しくは一番下の追記をご覧下さい。(2018.12.5)
F22はアメリカ軍でしか運用されていない(機密が多すぎるため議会が他国への輸出を禁止したため)文句なしに世界最強のステルス戦闘機です。
ところが格闘戦闘能力やステルス性は非常に優れている一方、レーダーや戦闘用ソフトウェアは少しずつ時代遅れとなってきています。
F35は新しく世界9か国で共同開発されたステルス戦闘機で、格闘戦闘能力やステルス性はF22に劣ります。しかし、レーダー・ソフトウェア・コックピット周りの装備・味方と協力するための強力なネットワーク機能などはF35がF22を圧倒します。
つまり、機体性能が最強のF22とその他のアビオニクス関連が最強のF35を掛け合わせて、いいとこ取りの新型機を作ろうということなのです。
これだけ聞くとこのプランが最高のように思えますが、次に上げるようないくつかの問題もあります。
・調達費用が極めて高くなる可能性がある。
なんと1機230億円との話もあります。ちなみにF35は日本向け価格が1機あたり146億円です。
・アメリカ軍がこの新型機を導入する可能性が低い。
アメリカ軍も勿論、F22の後継機を欲していますが、既存機の改修ではアメリカ軍の求める新型機の性能を満たすことができない可能性が高いのです。そうなると当然、アメリカ軍優先のアメリカ企業にとって、日本オリジナル機であるこの機種の改修・性能向上はあまり利益が見込めないために消極的になってしまう可能性が高いです。つまり、将来的にこオリジナル機の性能向上改修などが滞りがちになる可能性が高いのです。
イギリスでは、老朽化するユーロファイター・タイフーンの更新機種として"テンペスト"の開発を計画してきました。
テンペストは従来の機関砲に変わりレーザー兵器や、F35を上回る最新のアビオニクスを搭載する予定となっています。
ところで、F3開発にあたって、ロッキード・マーティン(アメリカ) の案が没になった以上、実質この案(イギリスとの共同開発)しか残っていないことは事実です。
しかし、未だ日英両国から公式なアナウンスは無いなめ、詳しい情報は分かっていません。
日本政府は2019年4月から開発作業を開始したい意向であり、開発プランの早期決定が急がれます。
○結局のところは国際共同開発か
政府は2018年の防衛大綱に「日本主体での国際共同開発」を盛り込んだようです。つまり、結果的にはほぼ、国際共同開発で確定と言えそうです。
理由としてはやはり高額の開発費です。2〜3兆円の開発費を日本のGDP1%という少ない防衛予算から捻出するのはかなり困難なことであるのは容易に想像できます。
各国の軍事費(2017)
*追記 2018.12.5
複数の報道によれば、日本政府は中期防衛力整備計画に次期戦闘機の開発方針として「国産エンジン・国産ソフトウェアを活用しつつ、"日本主体"での国際共同開発」を盛り込んだようです。
つまり、ロッキード社が提案した"F22とF35のハイブリッド"は没になったと思われます。
【更新履歴】
2018.10.15 記事投稿
2018.12.5 更新
2019.2.4 一部の古い情報を削除・修正 / 記事内容追加