極東ミリタリー情報館

主にあまり軍事関連に詳しくない人へ様々なミリタリー関連ニュースを分かりやすくお伝えします。

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イージス艦

【自衛隊vs韓国軍②】実力比較!竹島奪還作戦を考える!(海軍力比較編)


空軍力比較編自衛隊vs韓国軍①】実力比較!竹島奪還作戦を考える!(空軍力比較編)」

をお読みでない方は、コチラからご覧下さい。



はじめに

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今回は第2回、日韓両軍の海軍力を比較していきたいと思います。

島嶼奪還作戦においては、空軍・海軍の力が圧倒的に重要です。
一般的には、敵の駐留部隊を殲滅したあとに、

作戦領域上空の①制空権確保→②艦艇・潜水艦・対潜哨戒機により制海権確保

という流れになります。

前回の空軍力比較編では、航空自衛隊は韓国空軍よりも優勢であることが分かりました。
つまり、ステップ①「制空権確保」はクリアできる可能性が高いということです。

今回は、ステップ②「制海権確保」に必要な海軍力を比較していきます。




投入可能戦力



軍艦は、同型艦を3隻持ち、一隻をドック入り、一隻を乗員休憩、一隻を実戦配備とするのが理想的な運用であると言われています。

ここでは、配備が3隻以下の場合は1隻のみ投入、4隻以上の場合は必要に応じて投入戦力を増強するものとします。



◯潜水艦


◇海上自衛隊


そうりゅう型潜水艦 ×12

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世界最高レベルの通常動力型潜水艦です。特に隠密性に優れています。


隠密性 :90点
攻撃力 :70点


投入可能戦力: 6隻

 (4隻ドック入り、2隻後方待機、6隻作戦投入)



おやしお型潜水艦 ×11

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そうりゅう型潜水艦の前級にあたります。


隠密性 :75点
攻撃力 :60点


投入可能戦力: 5隻

(3隻ドック入り、3隻後方待機、5隻作戦投入)



◇韓国海軍


214型 ×7

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ドイツ製の212型潜水艦の輸出版(ダウングレード版)となります。
元の212型潜水艦はかなり優秀な潜水艦であることが知られています。
しかし、韓国海軍の214型はかなり稼働率が低いことが指摘されています。


隠密性 :85点
攻撃力 :70点


投入可能戦力: 2隻

(4隻ドック入り、2隻後方待機、2隻作戦投入)



209型 ×9

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これもドイツ製の潜水艦です。設計自体はかなり古く、50カ国以上に輸出されたベストセラーです。
しかしながら、韓国海軍では整備が行き届いておらず、214型と同じように稼働率は低いとされています。


隠密性 :50点
攻撃力 :55点


投入可能戦力 3隻

(4隻ドック入り、2隻後方待機、2隻作戦投入)


◯ミサイル駆逐艦(イージス艦)



◇海上自衛隊

海上自衛隊のイージス艦は以下3つの級に分けられます。いずれも極めて高度な防空能力が特徴的です。


こんごう型(イージス艦) ×4

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出典: 防衛省公式HP


艦隊防空 90点
個艦防空 95点
対艦攻撃 90点
対潜攻撃 55点


投入可能戦力 1隻



あたご型(イージス艦) ×2

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艦隊防空 95点
個艦防空 100点
対艦攻撃 95点
対潜攻撃 60点



投入可能戦力 1隻


まや型(イージス艦) ×1

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艦隊防空 100点
個艦防空 100点
対艦攻撃 95点
対潜攻撃 60点



投入可能戦力 1隻



◇韓国海軍


世宗大王級(イージス艦) ×3

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韓国初のイージス艦で、世界で最も重武装の艦です。

艦隊防空 95点
個艦防空 100点
対艦攻撃 100点
対潜攻撃 70点


投入可能戦力 1隻



◯駆逐艦


◇海上自衛隊

海上自衛隊では、イージス艦を除くと汎用護衛艦が駆逐艦に相当します。
なお、DE (あぶくま型) は駆逐艦としては小さく、フリゲート相当なので戦力としてカウントしていません。


あさひ型 ×2

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艦隊防空 0点
個艦防空 75点
対艦攻撃 70点
対潜攻撃 85点


投入可能戦力 1隻



あきづき型 ×4

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艦隊防空 60点
個艦防空 85点
対艦攻撃 75点
対潜攻撃 65点



投入可能戦力 2隻



たかなみ型 ×5

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艦隊防空 0点
個艦防空 65点
対艦攻撃 65点
対潜攻撃 60点


投入可能戦力 2隻



むらさめ型 ×9

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艦隊防空 0点
個艦防空 70点
対艦攻撃 65点
対潜攻撃 70点



投入可能戦力 2隻




あさぎり型 ×8

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艦隊防空 0点
個艦防空 60点
対艦攻撃 55点
対潜攻撃 55点



投入可能戦力 2隻




はつゆき型 ×12

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艦隊防空 0点
個艦防空 45点
対艦攻撃 50点
対潜攻撃 50点



投入可能戦力 2隻




◇韓国海軍

韓国海軍には2種類の駆逐艦相当の艦艇が配備されています。なお、フリゲートやコルベットは、サイズが小さく武装も貧弱なうえ、一般的には艦隊を組んでの戦闘には用いられないことから戦力としてカウントしていません。


李舜臣級 ×6

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艦隊防空 40点
個艦防空 85点
対艦攻撃 90点
対潜攻撃 90点



投入可能戦力 2隻




広海土大王級 ×3

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艦隊防空 0点
個艦防空 70点
対艦攻撃 80点
対潜攻撃 70点



投入可能戦力 1機




◯ヘリコプター搭載駆逐艦(航空運用能力がある艦艇)


◇海上自衛隊

海上自衛隊には2種類のヘリコプター搭載護衛艦が配備されています。

ひゅうが型 ×2

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艦隊防空 35点
個艦防空 85点
対艦攻撃 25点
対潜攻撃 95点
航空運用 75点



投入可能戦力 1隻



いずも型 ×2

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艦隊防空 0点
個艦防空 40点
対艦攻撃 0点
対潜攻撃 100点
航空運用 90点



投入可能戦力 1隻



◇韓国海軍


韓国海軍には、独島級が配備されており、ヘリコプター空母に準ずる航空運用能力を持っています。
しかし、韓国海軍では独島級を強襲揚陸艦として分類しているため、この記事でもそれに倣って輸送揚陸艦として扱うこととしました。



◯輸送・揚陸艦


◇海上自衛隊

おおすみ型 ×3

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物資輸送 90点
強襲揚陸 70点
個艦防空 0点
対艦攻撃 0点
対潜攻撃 0点
航空運用 30点



投入可能戦力 1隻



◇韓国海軍


独島級 ×1

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物資輸送 95点
強襲揚陸 70点
個艦防空 0点
対艦攻撃 0点
対潜攻撃 10点
航空運用 65点


投入可能戦力 1隻



高峻峰級 ×4

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物資輸送 50点
強襲揚陸 40点
個艦防空 0点
対艦攻撃 0点
対潜攻撃 0点
航空運用 15点


投入可能戦力 2隻




天王峰級 ×3

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物資輸送 75点
強襲揚陸 55点
個艦防空 0点
対艦攻撃 0点
対潜攻撃 0点
航空運用 0点


投入可能戦力 1隻



◯対潜哨戒機(固定翼)


◇海上自衛隊


P-3C ×54

アメリカ製で世界各国で使われる対潜哨戒機です。旅客機を改造して作られました。潜んでいる潜水艦を見つけ出すのが任務で、さらに潜水艦を攻撃することもできます。

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対潜哨戒 80点

稼働機 54×0.8≒43 (稼働率80%)

後方待機・領海警備必要分 23機


投入可能戦力 20機



P-1 ×19

P-1 はつい最近新しく配備された純国産の対潜哨戒機です。
4基のターボファンエンジンを搭載しているうえ、いちから哨戒機として開発されたため、哨戒任務に伴う低空飛行に適した機体となっていることも特徴です。

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対潜哨戒 95点

稼働機 19×0.8≒16
後方待機・領海警備必要分 10機


投入可能戦力 6機




◇韓国海軍


P-3C/CK ×8

日本に配備されているタイプと能力的には殆ど同じものです。

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対潜哨戒 83点

稼働機 8×0.7≒5機 (稼働率70%の場合。この稼働率は空軍機に準ずる)

後方待機・領海警備必要分 2機


投入可能戦力 3機



戦力まとめ

日韓両海軍 種類別装備数

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左から順に、潜水艦,イージス駆逐艦,駆逐艦,ヘリコプター空母,輸送揚陸艦,対潜哨戒機(固定翼)



◇海上自衛隊

潜水艦戦力総合 1635
水上艦戦力総合 3990
対潜哨戒能力(固定翼) 2170


◇韓国海軍

潜水艦戦力総合 625
水上艦戦力総合 1875
対潜哨戒能力(固定翼) 249




日韓海軍 分野別得点グラフ
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・以下、各項目ごとの点数

青字 海上自衛隊
緑字 韓国海軍



潜水艦戦力総合
1635
625

潜水艦戦力項目別点数

隠密性 
915
320

攻撃力 
720
305



水上艦戦力総合
3990
1875

水上艦戦力項目別点数

艦隊防空
440
175

個艦防空
1145
340

対艦攻撃
995
360

対潜攻撃
1055
430

航空運用
195
95

物資輸送
90
270

強襲揚陸
70
205



対潜哨戒(固定翼機)能力総合
2170
249




おわりに


このように無理矢理点数化すると、海軍力の面だけ見れば海上自衛隊が圧倒することが分かります。
ただし、この点数化はあくまで目安にしかならない物ですのでご了承下さい。

次回は第3回、いよいよ「竹島奪還作戦」をシミュレーションしていきます!

ここまでお読みいただきありがとうございます。


新型イージス艦 DDG179 まや 進水!

*今回は新型イージス艦について軽くまとめただけの記事です。

ついに進水した新型イージス艦


海上自衛隊は2018年7月30日、JMU磯子工場(横浜市)で行われた命名進水式で新型イージス艦27DDGを"まや"と命名しました。また同型艦の建造も進められていて、これら2隻を含めると海上自衛隊は合計で8隻のイージス艦を保有することとなります。

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基本データ

艦種    :ミサイル護衛艦
基準排水量 :8200t
満載排水量 :10250t
武装;   
62口径5インチ単装砲
Mk.41VLS 96セル
17式SSM 4連装発射筒
68式三連装短魚雷発射管
CIWS 20mm機関砲


新型イージス艦建造の持つ意味とは


最も大きな意義はやはり、艦隊防空・弾道ミサイル防衛能力が大幅に向上することです。中国がイージス艦にも匹敵する高性能な艦隊防空能力を保持する艦を次々と建造したり、北朝鮮が弾道ミサイル開発を続けている現在、もっとも必要と考えられる防衛装備品のひとつです。
この艦の最大の特徴はNIFC-CAとCECの運用能力を持つことですが、これらについては後程記事にしていきたいと思います。

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DLP7m50XcAEXLrQ

中国海軍055型駆逐艦



艦名"まや"の重責

まやという艦名は、太平洋戦争(大東亜戦争)中の重巡洋艦にも使われました。重厚な武装の重巡洋艦は戦艦の影に隠れがちですが、旧海軍の華とも言いえるもので海自がこの艦にかける期待を示しているとも言えます。
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重巡摩耶


【海上自衛隊・イージス艦】新型イージス艦8200t型護衛艦!(27DDG&28DDG)


追記:2018.08.01
新型イージス艦の1番艦は「まや」と命名されました!
新型イージス艦 DDG179 まや 進水!」


(記事本文)
今回の記事では、海上自衛隊の新型イージス艦8200t型護衛艦について見ていきましょう!

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8200t型の予想図


そもそも、イージス艦とは?



イージス艦とは、アメリカで開発された"イージスシステム"を搭載した戦闘艦艇の総称です。名前の由来はギリシャ神話に登場する、あらゆる邪悪を防ぐ盾"Aegis"だと言われています。


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Aegis


その由来通り、イージス艦は極めて高い防空能力を持ちます。搭載されているSPY-1レーダーと情報処理システムで多数の目標を捕捉・追尾・攻撃できるのです。


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AN/SPY-1


さらにイージス艦はミサイルの種類を変えることによって対空任務の他にも対艦対地攻撃もこなせる、極めて高機能な艦艇なのです。



海上自衛隊のイージス艦は2種類


海上自衛隊には、現在イージス艦は2種類配備されています。それは、こんごう型あたご型です。


こんごう型は1990年から建造が開始された、海上自衛隊初・且つ世界初のアメリカ海軍以外の所有となるイージス艦です。全部で4隻が建造されました。ミサイル発射機はMk.41VLSを搭載していて、艦全体で90セルあります。また、全艦が弾道ミサイル防衛能力を付与されていて、イージスBMD3.6システムを搭載しています。

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こんごう型



あたご型は2004年から建造が開始された最新のイージス艦です。全部で2隻が建造されました。ミサイル発射機はMk.41VLSで、艦全体で96セルです。また、こんごう型と異なり、対戦哨戒ヘリコプターを艦載できます。ミサイル防衛能力は、建造当時は付与されていませんでしたが、2016年からイージスBMD5.0システムを搭載する改修を行っています。

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あたご型

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Mk.41VLS。上の蓋が開いて、ミサイルが発射される。


8200t型の変更点と特徴



・艦体を大型化。

こんごう型 (7250t)

あたご型    (7750t)

8900t型      (8200t)


・イージスシステムに最新のベースライン9Cを搭載。

こんごう型/1〜3番艦    ベースライン4

こんごう型/4番艦         ベースライン5

あたご型護衛艦            ベースライン7(*)

8900t型                        ベースライン9C



(*)現在はベースライン9Cへのアップデートを実施中。


・イージスBMD5.1システムを搭載。

こんごう型:   3.6

あたご型   :    建造当時は搭載なし / 現在は5.0にアップデート中

8900t型     :    5.1

・航空機・弾道ミサイル・巡航ミサイルへの同時対処 ( IAMD ) が可能。



主に以上4点であると思われます。



イージス艦を増備する意義


まず、近年問題となっている弾道ミサイルへの対処能力が大幅に向上にします。さらに、現行の6隻体制から8隻体制へとなることに加えて、イージスアショアが建設されることによりローテーションにも少しは余裕ができ、今まで弾道ミサイル防衛任務に貼りつかされていたイージス艦が、本来の任務である艦隊防空を行う余裕も出てくるでしょう。


いつ配備されるのか


現在、建造される予定の2隻のうち、1番艦はすでに建造が開始されており、今年(2018年)にも進水する予定です。2番艦は今年から建造が始まり、来年に進水する予定です。

【2018.10.19追記】
8200t型イージス艦の1番艦は2018.7.30に命名・進水式が行われ、"まや"と命名されました。
"まや"についての記事は簡単な内容ですが、以下をご覧下さい。



まとめ


このように、イージス艦増備は、弾道ミサイル防衛能力と艦隊防空能力を向上することができ、一石二鳥といえます。しかし、本当のところは、イージス艦はまだまだ足りないところですが、建造費が極めて高価なためにたくさんは配備できないのが実情です。

それでも、イージス艦のみならず、日本は少しずつでも装備拡充・高機能化を行って、この不安定な時代を乗り切って行かねばなりません。





日本の弾道ミサイル防衛の仕組み。敵基地攻撃能力とは?



悪化する世界情勢


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北朝鮮は、金正恩政権になってから、核開発とミサイル開発を加速させている。2017年には16回ものミサイル実験2回の核実験を強行した。

東アジアのみならず、世界全体の情勢がきな臭くなってくる中、日本の弾道ミサイル防衛(MD)はどのような仕組みで行われているのだろうか。また、弾道ミサイルをどの程度まで迎撃可能なのだろうか。今回は様々な切り口から日本の弾道ミサイル防衛について、見ていくこととする。


そもそも、弾道ミサイルとは何なのか



弾道ミサイルはロケットで潜水艦や地上から発射されると最初の数分で急激に加速する。最高で高度1000kmほどまで上昇したミサイルは、燃料なしで慣性により飛行し、弾道軌道(ボールを投げた時のような軌道)を描きながら、秒速数キロメートルの速度で地上に落下する。


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弾道ミサイルの飛行経路(イメージ図)


現在の日本の弾道ミサイル防衛は2段構え



第1段階RIM-161 Standard Missile 3


​第1段階は、イージス艦から発射されるRIM-161 Standard Missile 3 (以下、SM3とする)による迎撃である。イージス艦のVLS(Vertical Launching System/垂直発射装置)から発射されたSM3の弾頭が、弾道ミサイルに衝突することによって目標を破壊する。SM3の後継として、現在SM3 Block2Aを日米で共同開発中である。



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イージス艦「きりしま」から発射されるSM3


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VLSから発射されるSM3


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イージス艦「あしがら」



第2段階PAC3


射程約20〜30kmの地上配備型迎撃ミサイルである。特に、2009年以降の最新版ソフトウェアを搭載したPAC3は迎撃率100%を誇る。

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展開中のPAC3



弾道ミサイルを探知時の対応



弾道ミサイル防衛は、現状ではアメリカの協力が欠かせない。弾道ミサイルの発射はまず、アメリカの早期警戒衛星が探知する。


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早期警戒衛星


アメリカの早期警戒衛星は、地球上のあらゆる地点を10秒に一度のペースでスキャンして、ミサイル発射時に発生する赤外線を検知する。


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弾道ミサイル迎撃のイメージ図


探知した情報は米軍から自衛隊に伝えられ、迎撃の準備態勢が取られることとなる。

 

政府が破壊措置命令を出した場合は、ミサイルが日本の領土領海、場合によってはアメリカの領土領海に落下する可能性がある場合に破壊措置(=迎撃)が実施される。

 

北朝鮮がミサイル発射を頻発していることを受けて、政府は2016年8月8日から常時破壊措置命令を発令しており、この措置命令は3ヶ月毎に更新される。



現在の日本におけるミサイル防衛の問題点



まず、根本的な問題はミサイル防衛は完全ではなく、失敗する可能性も大いにあるということである。例えば、敵のミサイルが1〜2発程度なら対応が可能でも、同時に20発などとなると、全てを迎撃することは難しい。


残念ながら、北朝鮮からミサイルで日本を攻撃する場合、大陸間弾道ミサイル(ICBM)といった大掛かりなものではなく、中距離弾道ミサイルでも十分なのである。彼らは中距離弾道ミサイルであれば大量に保有しているため、多数のミサイルの同時攻撃というのは現実的にも十分にあり得る脅威なのだ。


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北極星2型(北朝鮮の中距離弾道ミサイル)

 

さらに、弾道ミサイルの防衛にイージス艦が割かれている、このこと自体が憂慮すべきことなのである。そもそも、イージス艦の本来の目的は、弾道ミサイルを迎撃することではなく、味方の艦隊を対艦ミサイルから守ることなのだ。

 

つまり、貴重なイージス艦が弾道ミサイル防衛に割かれているということは、本来の任務が手薄になる可能性があるということなのである。

 

加えて、現在のミサイル防衛システム2段構えでは、前述の通り、ミサイルの飽和攻撃に突破されてしまう可能性が非常に高い。このことも大きな問題であろう。

 

また、ミサイルへの防御態勢は2段構えとは言っても、PAC3の射程は20〜30kmであり、非常に限られた範囲しか守ることができないのだ。実際に、PAC3によって守られているのは関東圏の人口密集地と全国の自衛隊基地や米軍基地、重要防護施設の一部に限られている。

 

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PAC3の配備場所

 

つまり、日本の国土の大部分は、実質的にはイージス艦による一段構えの防衛体制しか取られていないのである

 

これらの問題を解決するために新たに陸上自衛隊に導入されるのが、イージス・アショアだ。


イージスアショアとは?

 

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イージス・アショア

 

イージス・アショアとは、簡単に言えば、イージス艦のレーダーと戦術処理装置・ミサイル発射装置を陸に設置したものである。

 

射程距離は最新型のSM3 block2A の場合、約2500kmで、2基のイージスアショアで日本全体をカバーできる。

 

また、イージスアショアはTHAAD(ミサイル防衛システムの一種)よりも費用対効果に優れている。


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 THAAD

 

ここまでイージスアショアの利点ばかりを取り上げてきたため、イージスアショアは万能なようにも見える。しかし、実のところはイージスアショアには大きな問題が2つある。

 

1つ目は、イージスアショアはミサイルを迎撃する高度がイージス艦と被っている点​である。

 

つまり、多段的な防衛はできないということになる。高高度で撃ち漏らしたら次は中高度、それでも撃ち漏らしたら低高度で、といった運用ができないのである。この点に関しては、イージスシステムの高高度とPAC3の低高度の間の中高度でミサイルを迎撃するTHAADが優れていると言える。

 

しかし、政府はすでにイージス・アショアの導入を決定しており、秋田県と山口県に一基ずつ配備される予定だ。

 

そして2つ目、これは日本のミサイル防衛政策最大の問題点、すなわち日本がミサイルを防衛する能力だけで、根本的な問題を取り除く能力がないことだ。

 

要するに、日本は敵基地攻撃能力を持たない​ということである。

 


実質的には、敵基地攻撃能力 を保持する予定の自衛隊

 


日本政府は、2017年、実質的な敵基地攻撃能力を保有する予定であることを発表した。

 

ここまで読んで頂いた方ならお分かりいただけたるであろうが、敵基地攻撃能力を持たずに敵ミサイルの迎撃だけに固執するだけでは、いつかは我々のミサイル迎撃システムを突破されてしまうのだ。

 

これでは、相手に勝つどころか、良くても引き分け(=我々が全弾を撃墜して敵側がミサイルを撃ち尽くした場合)である。実際には、ほぼ確実に我々は一方的に攻撃に晒されて大きな被害を被るであろうということは火を見るより明らかだ。

 

敵基地攻撃能力を持つことにより、敵は自分への報復攻撃を恐れて、攻撃を躊躇する。さらに、相手が攻撃して来た場合には、直接相手の基地を攻撃することにより、積極的に脅威を除去することができる。

 

これらは、一般的に抑止力とも言われる。我々の自衛のための武装は結果的には自国の安全に資するのである。

 


自衛隊が手に入れる"敵基地攻撃能力"とは


具体的には、"JASSM ER"、"LRASM"、"JSM"

などの巡航ミサイルの導入を検討している模様である。


巡航ミサイルとは、弾道ミサイルとは異なり、大気圏内をジェットエンジンで飛行する。

また、弾道ミサイルが超音速で飛行するのに対して、巡航ミサイルは亜音速で飛行する。

 

以下は、それら巡航ミサイルの特徴をまとめた表である。

 

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産経ニュースより


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JASSM

 

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JSM

 

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LRASM

 

 

F15は航空自衛隊の主力戦闘機ですあるが、これらの搭載には小規模な改修が必要なようだ。 (パイロンの改修)

 

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F15J

 

F35は航空自衛隊に配備が進められている最新鋭ステルス戦闘機で、敵のレーダーに映りにくいため、相手に気付かれる前に攻撃を行うことが可能である。

 


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F35



http://milita15.blogo.jp/archives/7009724.html
航空自衛隊にも導入された最新ステルス戦闘機"F35A"の実力とは」


*F35については上の記事を参照されたい

 

特に、JASSM ERは射程距離約1000kmで、日本上空から平壌を攻撃できる。北朝鮮への抑止力という意味でも極めて有意義と言える。




 


弾道ミサイル防衛のこれから

 


弾道ミサイル防衛は今のところ、多数の問題点がある。これからもこれら全てを解決するのは不可能であろうが、同時飽和攻撃への対処能力を高めたり、敵基地攻撃能力を強化して抑止力を高めたりといったことは必要となる。

 

東アジアは、第二次世界大戦後にもまれに見るほど、不穏な空気が漂っている。

 

戦後70年以上経ったいま、日本は安全保障政策において大きな転換点に立たされているのかもしれない。


 

 

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