今回は、日本の内閣官房が運用する、事実上のスパイ衛星である情報収集衛星についての記事です。
情報収集衛星とは?
情報収集衛星/Information Gathering Satellite (IGS)とは、日本が運用しているスパイ衛星のことです。主に収集した情報は内閣衛星情報センターで管理されています。
内閣衛星情報センターでは、その任務の性質上、他の国家機関とは段違いの機密保持体制がとられていて、職員の私物(コンピュータやスマートフォン、バック等)の持ち込みが禁止されているほどです。
情報収集衛星の種類
情報収集衛星は2種類あり、光学衛星とレーダー衛星に分けられます。
光学衛星は、赤外線望遠カメラを搭載しており、地上の画像を取得します。最新の光学衛星は分解能30cm級と言われます。これはアメリカのスパイ衛星より性能は落ちるものの、精度はかなり高いと言えます。
しかし、光学衛星では観察対象地域が夜間の間や、雲などで覆われている時にはかなり精度が落ちます。そんな時はレーダー衛星が使用されます。
レーダー衛星は合成開口レーダーを搭載しており、地上を夜間・悪天候時にも監視可能です。分解能は50cm級と言われています。
現在は光学衛星2機とレーダー衛星4機が運用中です。
さらに、2019年には大容量のデータ通信に対応するためのデータ中継衛星が打ち上げられる予定です。
情報収集衛星(スパイ衛星)の特徴
スパイ衛星と通常の衛星とは運用方法の違いだけではなく、周回する軌道や寿命なども大きく異なります。
スパイ衛星は地上を観察するために、なるべく地上に接近して撮影します。そのため、一般にかなり低い軌道を周回しており、通常の衛星周回軌道よりも大きな空気抵抗のためにすぐに失速して高度を下げてしまうのです。
それを防ぐため、スパイ衛星は姿勢制御用燃料を搭載していて、高度が下がりすぎないようにときどき燃料を噴射して高度を保つ必要があるのです。従って、この姿勢制御用燃料が尽きると、衛星も寿命を迎えることとなるため、運用寿命は通常の衛星よりも短いのです。
さらに、アメリカのキーホール衛星というスパイ衛星は必要に迫られた場合は高度を上げるための燃料を逆に高度を下げるために使用することで160kmほどまで降りてくることができます。
そうすることで、極めて高精度な画像を取得することができますが、燃料の消費が激しくなるために運用寿命は極端に短くなります。
情報収集衛星の運用と効果
情報収集衛星は軍事目的だけではなく様々な用途に使用されています。被災地域の偵察・不審船の監視・火山活動の監視・などです。
また、反捕鯨団体シーシェパードは最近まで続けてきた日本漁船への違法な攻撃行為を中止すると発表しており、その理由として"共謀罪と情報収集衛星"を挙げています。
このように、様々な形で利用できる情報収集衛星は極めて有用なのです。
情報収集衛星はこれからも、新しい衛星が打ち上げられる予定で、余裕のある運用体制の構築が急がれています。