海岸に漂着した大量の漁船

2017年の後半にかけて、日本列島の日本海側に北朝鮮の漁船が流れ着くという出来事が多発した。北朝鮮が核ミサイル戦力の開発を強行するなか、世界各国が経済制裁を強化した影響で、北朝鮮内部の食糧事情が悪化しているのだ。そのため、金正恩は、北朝鮮軍人を漁業に駆り出した。金正恩は漁業のことを「漁業戦闘」などど称して国民を扇動している。今回の漁船漂着多発は、漁獲量のノルマを達成しようとして、粗末な沿岸用の船で沖合まで出漁したことが直接の原因だと考えられている。

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漂着した漁船

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松前小島に漂着した漁船には"朝鮮人民軍第854部隊"と書かれたプレートが見つかった

それでは、この漁船漂着事件と、武装工作員と何の関係があるというのだろうか?

今回、漂着船の船員が全員が武器を所持しておらず、偶然流れ着いただけの漁民であったことは、せめてもの幸運だっただけに他ならないのだ。

もしも、北朝鮮が日本を攻撃する意図で、日本に武装工作員を送り込もうと考えた場合、このような粗末な船があれば、自動小銃やロケットランチャー、化学兵器や生物兵器で武装した工作員を隠密に送り込むことが可能なのだ。

また、このような任務に使われる小型船舶は大抵の場合、木造である。小型木造船舶なら、日本の領海を侵入しても、レーダーに(ほとんど)映らないので、彼らの隠密上陸を防ぐことは大変難しい。


以前に日本でもあった北朝鮮の工作船事件

以前にも、北朝鮮の工作船が日本の領海に出没した事件は、大きな例として以下の2つが知られています。

能登半島沖不審船事件(1999年)

1999年3月23日、海上自衛隊P3C対潜哨戒機が佐渡島の西、約18キロメートル沖合で漁船のような船舶を2隻確認した。

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P3C

ところが、漁船にしては不審な点があるため、書いてある船名を漁協に問い合わせた。すると、2隻の船舶の船名は既に廃船された船舶のものと、実在はするものの、兵庫県沖で操業中の船舶のものであることが判明。

そこで、海上自衛隊はこれら不審船の追跡を開始、航空自衛隊もE2C早期警戒機を派遣して対応した。

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E2C

海上保安庁は現場海域に複数の巡視船を派遣したが、不審船は速度を上げて逃走を図ったため、巡視船は引き離され始めた。

そのため、第9管区海上保安部長の指示の元、巡視船2隻から1,300発もの威嚇射撃を行うも、結局逃げ切られてしまいます。

その後、日本側が追跡を断念したと見た工作船は一時的に停船した。その報告を受けた防衛庁長官は海上自衛隊に海上警備行動を発令した。

現場海域に派遣された護衛艦みょうこうは、速射砲で35発の警告射撃を実施、P3C対潜哨戒機も、対潜爆弾12発による爆撃を行った。

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みょうこう

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62口径72mm単装速射砲

しかし、不審船は、逃走を続けて結局、日本の防空識別圏外に出たため、日本側は追跡を断念した。

九州南西海域工作船事件(2001年)

2001年12月21日、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機は、東シナ海公海上で不審な船舶を発見。不審船の画像を防衛庁で解析した結果、北朝鮮工作船の可能性が高いとして、海上保安庁に通報した。

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不審船

海上保安庁は現場海域に巡視船24隻、航空機14機を派遣、海上自衛隊も2隻の護衛艦を向かわせた。

海上保安庁の停船命令を無視して逃走を続ける不審船に対して、巡視船から20mm機関砲による警告射撃、船体射撃が行われた。

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20mm機関砲

船体射撃の際に、不審船の甲板にあった予備燃料に命中し、火災が発生したが、不審船はこれを消火した後、逃走を続けた。

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炎上する不審船

夜になり、早急に不審船を確保する必要があると判断した海上保安庁は強行接舷を試みるも、不審船は自動小銃や対空機関砲、対戦車ロケット砲などで巡視船を攻撃してきた。そのため、巡視船が20mm機関砲で正当防衛射撃を実施したところ、不審船は自爆して、沈没した。

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引き揚げられた不審船から発見された大量の武器

2つの事件はどちらも、工作船の工作員が日本に上陸して、犯罪(麻薬密輸など)に関与していた。その時は、日本を武力攻撃する意図が無かったために、まだ不幸中の幸いだったものの、このような重武装の工作員が日本でゲリラコマンドのために日本に上陸したらどうなるだろうか。
極めて大きな人的・経済的被害が発生することは明白である。


武装工作員はテロリストと同じ


武装工作員とは、あまり聞かない単語でイメージし辛いかもしれないが、簡単に言うと、軍に所属するテロリストである。

北朝鮮の武装工作員は、日本の領土に侵入した後、様々な攻撃を仕掛けてくるだろう。

電気、ガス、水道、公共交通機関、道路など、インフラや輸送を破壊したり、政府機関や原発などを襲撃することも十分に考えられる。

しかし、平時に彼らが工作員としてやってくるならば、諜報などを通じて、事前に防ぐことができるであろうし、発見して拘束することもまだ可能だろう。

ところが、朝鮮半島有事の際の、武装工作員はさらに厄介な方法で日本にやって来るのだ。

工作員は難民に紛れてやってくる

朝鮮半島有事の際には、日本に大量の難民がやって来ることは容易に想像できる。日本は国際社会の一員として、難民を受け入れざるを得ないであろう。この状況は、武装工作員にとって、利用しない手はない。大量の難民に混じって武装工作員がやって来た場合、工作員と難民を見分けるのは困難を極めるに違いない。

麻生氏は、

"武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない"

と発言して、去年大きな物議を醸した。

しかし、この発言は、あながち間違ったものではないのかもしれない。実際に、我々は武装工作員が混じっているかもしれない、大量の難民をどうすべきか考える必要があるからだ。


武装工作員を支える土台人


土台人とは主に、日本に住む在日朝鮮人のうちの、北朝鮮の工作活動を支援している人たちを指す。彼らは、工作員に潜伏場所や資金を提供したり、工作活動の手伝いをしたりする。ただ、土台人の大部分は、朝鮮総連が北朝鮮に住んでいる彼らの親族に危害を加える(強制収容所への収容など)と脅迫し、人質のように利用することによって半強制的に土台人として仕立て上げている者なのだ。そもそも、工作活動を公然と行う朝鮮総連が日本に合法的に存在すること自体、おかしいと言えるが。

少なくとも、日本政府は、日本で工作員が活動しにくくするためにも、工作員を支援しているネットワークを摘発・壊滅させる必要がある。

これは、日本が独立した国家である限り、至極当然なことなのだ。


これからの日本に必要なこと

残念ながら、今の日本には、このような事に対して危機感を持つ人はごく一部にすぎない。しかし、これは漁船漂着事件ですでに示された通り、非常に差し迫った現実的問題なのだ。
我々は、まず、一日本国民として、我々ひとりひとりが、安全保障の意識を持つことが求められている。

さらに、警察の対応力もこのままでは話にもならない。このような、敵の工作活動の対策を担うのは主に警察の警備部公安課の任務であるが、地方の警察には公安課の警察官が数十人しかいないところがほとんどなのだ。しかも、公安課の人員の大部分は日本国内の極左組織、新興宗教団体、右翼団体への対策に充てられるため、北朝鮮を担当できる人員は数人程度なのだという。
まずは、水際防御策として、特に日本海側の警察の公安課の人員を直ちに増強することも必要なのだ。