潜水艦は"海のステルス戦闘機"


潜水艦は、今も昔も、船舶にとって脅威であり続けています。はるか昔、第二次世界大戦において、ドイツは潜水艦(U ボート)で連合国の船舶を次々と沈めて見せ、多大な心理的ダメージを与えることに成功しました。


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  UボートⅠ型


また、アメリカ軍の潜水艦も、当時、日本の海上輸送を攻撃することで、日本に物理的・心理的な非常に大きなダメージを与えたのです。

潜水艦が心理的なダメージを敵に与えられるのは、その隠密性によるものです。

敵に「潜水艦からいつ攻撃を受けるかもわからない」という緊張感を与えることができますし、敵は戦力を対潜水艦戦に当てざるを得なくなるのです。

さらに、潜水艦に、敵の領土を攻撃できるミサイルを搭載すれば、敵の兵士だけではなく一般市民にも不安感を与えることができます


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弾道ミサイルを搭載するオハイオ級原子力潜水艦(アメリカ海軍)



潜水艦を見つけるために


潜水艦を見つけるには、主に"敵潜水艦の発する"を頼りに見つけ出すことになります。

そのために、艦船で海中の音を聞いたり、対潜哨戒機から、音を利用して敵潜水艦を探し出す装置を海に投下したり、ヘリから吊り下げたりしながら探します。


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P3C 対潜哨戒機


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P1 哨戒機


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SH60K 対潜哨戒ヘリコプター



対潜ヘリから吊り下げる形式のソナーは、ディッピング・ソナー (dipping sonar) とよばれています。


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ディッピング・ソナーを吊下するSH60J


航空機から投下するタイプのソナーはソノブイと呼ばれています。


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P3Cのソノブイ投下口


これらの装置を利用して、敵潜水艦を見つけ出すのです。しかし、前述の通り、潜水艦の武器は隠密性です。位置がバレてしまえば、手足をもがれたに等しいことです。

ですから、潜水艦もなるべく見つからないように、防音タイルをはったり、機関部の騒音を減らしたりして、敵に見つからないように工夫しているのです。


海上自衛隊の対潜水艦能力は世界最高レベル!



日本は、第二次世界大戦時に、アメリカの潜水艦によって苦しめられた苦い経験から、対潜水艦戦力が非常に充実しており、技術も、アメリカ軍が一目置くほどのレベルです。


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そうりゅう型潜水艦(海上自衛隊)


これにも歴史的な理由があります。


元々、海上自衛隊はアメリカ第7艦隊を補助するための部隊として設立されました。


特に、空母にとって、潜水艦は非常に危険な存在です。安価な魚雷で非常に高価な空母を沈められる危険があるからです。そこで、海上自衛隊は冷戦期に特にソ連の潜水艦を意識した装備体系を取ったのです。それ故に、例えば、対潜哨戒機P3Cの保有機数はアメリカに次いで世界第2位です。


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空母"ドナルド・レーガン"(アメリカ海軍)


ソ連が崩壊した後、暫くは、海上自衛隊の対潜水艦装備の使い道が減ったようにも思われましたが、近年の中国の台頭によってまたもや、対潜水艦戦力が必要とされているのです。


2018年1月10日には、中国の新型原子力潜水艦「093A型」が尖閣諸島沖の海域に侵入しましたが、海上自衛隊に2日間追い回された挙句、中国国旗を掲げて公海上に浮上する、という事件も起きています。



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093型原子力潜水艦(中国海軍)


「093A型」は、前級の「091型」の騒音を軽減したタイプなので、それを見つけてしまう海上自衛隊の対潜水艦戦能力は非常に高いという事が分かるでしょう。


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中国国旗を掲げて公海上に浮上した093A型原子力潜水艦(中国海軍)



潜水艦ハンターその①P1哨戒機



P1哨戒機は、川崎重工業が主体となって開発した、最新鋭哨戒機です。ターボファンエンジン4発を備えているため、P3C対潜哨戒機よりも航続距離、速度ともに伸びています。


さらに、アメリカが開発した最新鋭哨戒機P8よりも低空での飛行性能が高くなっています。元々、哨戒機は、地上や海面を監視する必要があるため、通常の航空機よりも低空での飛行性能が重視されます。これまで、殆どの哨戒機は旅客機をベースにした機体が使用されてきました。なぜなら、哨戒機自体は必要機数があまり多くないため、専用の機体を設計するにはコストが高く付いてしまいます。


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P8A(アメリカ海軍)



P8が旅客機をベースにしている一方で、P1は専用の機体を設計しているためP1の方が低空での飛行性能が優れています。


P1 が専用機体を開発する際にコストを下げるために取った方法、それは同じ時期に開発された最新鋭輸送機C2と可能な限りの部品を共通化したのです。そうする事で、部品の調達個数を上げて、開発コストを下げることに成功したのです。


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C2輸送機(航空自衛隊)



その他にも、P1 は世界で初めてフライバイワイヤを採用しており、機械トラブルが起こりにくいといった特徴もあります。


潜水艦ハンターその②SH60 対潜哨戒ヘリコプター


正確には、海上自衛隊の対潜哨戒機にはSH60JSH60Kの2種類が配備されています。SH60JはアメリカのSH60Bを基に開発された機体です。SH60KはSH60Jを基に三菱重工が独自の改造を施した機体です。


SH60は特に、ヘリコプターの特徴を生かした運用が行われています。ヘリコプターは、当然、離着陸に滑走路を必要としないため、駆逐艦(護衛艦)にも搭載可能です。


現在、海上自衛隊にはSH60を大量に搭載可能なヘリコプター搭載護衛艦4隻配備されています。ひゅうが型2隻、いずも型2隻のそれらは、各護衛艦隊群に一隻ずつ配備されており、大幅な対潜水艦戦力の拡充に貢献しました。


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いずも型護衛艦


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ひゅうが型護衛艦


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いずも型護衛艦とひゅうが型護衛艦(奥がいずも型、手前がひゅうが型)


さらに、SH60Kは、97式短魚雷や対潜爆弾を搭載しており、検知した敵潜水艦を自ら撃破することも可能なのです。


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97式短魚雷


2013年1月30日には、中国海軍のフリゲート"連雲港"が護衛艦"ゆうだち"及び、"ゆうだち"搭載のSH60K に向けて火器管制レーダーを照射する事件も発生しています。
それだけ、中国海軍もSH60K を嫌がっているということでしょう。


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護衛艦"ゆうだち"(海上自衛隊)



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フリゲート"連雲港"(中国海軍)



その他の方法での潜水艦の捕捉


音以外でも、海底に網のように設置されたケーブルセンサーも潜水艦探知に利用できると言われています。ケーブルセンサーには一定間隔で津波計が設置されていて、水圧の変化などから、潜水艦を検出できるのです。

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日本と海外を結ぶケーブル網


さらに、対潜哨戒機や哨戒ヘリには、水面から僅かに突き出た潜望鏡を検出できるレーダーを備えており、敵潜水艦の潜望鏡の使用を不可能にします。


このように、様々な手法を駆使して、潜水艦を見つけ出すのです。